2010年2月23日火曜日

喜びの星

遠い昔、ハワイをはじめとしたポリネシア諸島の交流は、木や植物の繊維だけで作られた船で自由に行き来していたという。方位磁石もレーダーも使わずに星を知り、風を読み、生物と対話しながら進む数千キロの航海。

「ホクレア号が行く」という本は、古代の船と航海を多くの人々と一緒に現代に蘇らせた ナイノアさん が書いたもの。ホクレア号はハワイ社会の西洋化によって忘れかけられていたポリネシアの文化とアイデンティティ復興の象徴になった。



本の中で印象に残ったエピソードを。

船の材料となる程の大きな木は、経済発展の代償により失われたハワイの森には残されていなかった。一行は材料を求めアラスカへ出かける。

そこで出会った先住民の長老に事情を伝えると、彼は木を与えることを承諾。しかし一行はアラスカの人々の木や自然に対する敬意を目の当たりにし、その木を倒すことをやめるよう頼んでしまう。

森と家族のように接する、人々の姿勢に心を打たれた一行はハワイに戻り、100年経ってもハワイで育った木で立派な船が作れるようにと一万本の植樹をした。この植樹に参加したアラスカの人々からは「与えることこそが富だ。」という言葉とともに船を作るのに必要な大木がプレゼントされた。


島やアラスカなどの自然環境に制限がある風土では、富の「蓄積」より「分かち合い」が大事なことだそう。
現代の富への捕らえ方とは逆の発想です。富を手に入れることに奔走すると知らぬ間に分け与えることを忘れていくといいます。無償で分けることを喜びとする豊かさ。今の僕らにもとても必要な気がします。