2012年12月3日月曜日

現役の「房州じんの」に出会った。

先月の初め。一席、お茶にお招きいただいた。
招いてくれたのは僕が小学から中学時代に通った、お茶の先生ではなく、英語塾の先生だ。
お茶を30年以上やっている80歳近い女性である。

15年ほど連絡を取っていなかったのだけど、この秋にふと会いたくなって連絡した。
子育てのことや、0470-のこと、僕がやっている郷土研究のことを話したり、昔のことを聞いたりと、話がはずみ二度ほどお茶に招かれている。先生は10数年前と変わらず本当に明るい雰囲気をもっている。

当時僕は英語が好きだった。それは、塾に行くのが楽しかったからだと思う。
塾に行くと、英語をやるのは当たり前だが、話はたいてい脱線(これは自分からあえてさせていた)。英語とは関係ない話をよく聞いた。実はこの話の中に、中学のボウズにとっては広い視野の勉強が詰まっていたように思う。塾の帰り道は「あのはなしは為になったなぁ」と感心しながら星を見て自転車をこいでいたのを思い出す。ものによっては家に帰って日記にメモしたのもあったと思う。

お茶をいただきながら先生と話しているうちに、「0470-でじんのを展示する」という話題になった。
じんのについて説明すると「それならいいものがあるわよ」と言って、先生は母屋の方に何か取りに行った。

先生が持ってきたのは、深い藍の色をした古帛紗だった。
なんでも、明治生まれの父上が着ていた着物のハギレだそうで、織ったのは母上だと言う。

まさかのタイミングでリメイクされた現役の「じんの」にであうことができた。
僕はそれだけでも驚いたのだが、なにより先生がそれを大事に、自分らしい方法で今に役立てていることに感動を覚えた。

大人になった今でも、先生はいつも僕に大切なことを教えてくれる。



糸はたぶん絹と木綿だろう。染めは紺屋に出し、丸く穴の開いたところは母上が継いだという。
「月に見立てていかがでしょうか?」と愛情たっぷりな風に言う先生の表情が印象的だった。