2011年1月26日水曜日

寺下界隈



愛知県田原市にある「寺下通り」。何年か前に自転車でこの界隈を巡ったことがあった。

木造の古い民家や看板造りの商店、かつての遊郭らしき風情のある建物などがせせこましく並んでいて、路地全体に独特の時代感を醸し出していた。初めて訪れた土地勘のない僕にとって、そこはまるで時間のねじれた迷路のように感じられた。

日が暮れるごとにはっきり見えていた道端の風景は徐々にイメージの世界に変わっていき、暗さのせいか自転車のスピードは速くなった。街灯がつき始めた頃、小さい分岐の前でブレーキをかけて止まると、僕はあたかもタイムスリップしているような気になった。ここは人を歴史の一部に誘ってしまう界隈だ。

よく「町並みを保存しよう」という合言葉を聞くけれど、この界隈はそういった雰囲気は感じられなかった。理由は色々あると思うけれど、ただただ普通の姿がいつもの通り続いているんだろう。今、あの路地の風景はどうなっているだろう? 前の雰囲気をとどめているだろうか? 僕はそのままであって欲しいと思う。