「いないいないー。」と言いながら、顔を隠す指をほんの少しだけあけて娘の表情を見る。
最近はその意味もすっかり覚えたようで、「ばぁ」のタイミングを伺っているような様子。
「ばぁ」とやると、少し遅れて「ばぁ」と返してくるか、顔をくしゃっとつぶして嬉しそうな顔をしてはしゃぐ。
そんなやりとりが楽しくて、一日に何度もやるせいか彼女はいろんな「イナイイナイバア」を使い始めるようになった。
掃きだし窓に下がっているレースカーテンの方にハイハイをしていって、それで顔の辺りを隠してから「ばぁ」とやったり、今こうしてキーボードをたたいている間にも、引き戸ごしに目が合ったときも「ばぁ」とやった。
それからこんなのもある。彼女は筆記用具が入っている引き出しによく手をかけて開けてしまう。 今日の昼に目を放した隙にボールペンを持って振り回していので、ひとまず「ないない」と言って、正座していた自分の膝の裏にバレないように隠した。
楽しく遊んでいたのに、一瞬で目の前から消えてしまったボールペン。彼女は「ばぁ」「ばぁ」と繰り返した。
あれは、きっとボールペンさんが出てくるように願って言っていたんだと思う。
「いないいないばぁ」は、きっと彼女にとって、消えたものが目の前に戻ってくるという魔法の言葉。
膝の裏からサッとボールペンを出して「ばぁ」とやったら、いつものように顔をくしゃっとして、膝を伸ばしてはしゃいでいた。