2011年11月18日金曜日

あいさつ

このあいだ本で読んだ話です。

都会に近い環境で生まれ育った人が、仕事の関係でとある漁師町に住むことになりました。初めのうちは長い間過ごしてきた匿名性の高い都会の性分が抜けず、人に話しかけるのも話しかけられるのもいやだったそうです。

しかし、田舎の漁師町には気兼ねなく立ち話の声をかけてくるおばさんが当たり前にいました。
やはり自分の住んだ周りにもそんなような人はいて、最初のうちはどうも苦手な場面に出くわすことが多かったようです。

数年間経って、その町からまた都会に引っ越す頃には、すっかり自分から話しかけることを楽しめるようになりました。

再びの都会の暮らしで気になったことは、すれ違う人が目を合わせないこと。あいさつをしないこと。
今やこれもごく当たり前の光景かも知れませんが、その人はそれに小さな疑問を抱いたそうです。

ある日、その人は「一人あいさつ運動」なるものをはじめました。その内容は、いつも通る道ですれ違う人にあいさつをすること。ドキドキしながらのあいさつは、やはり返してくれるどころか、目をあわさずに足早に通り過ぎる人ばかり。

この運動にもほとほと疲れてしまったので、その人は今までしていたあいさつを止めました。

静かに歩く日が数日続きました。

ある日同じように歩いていると、ある人がその人に「おはようございます」と声をかけてきたという話。