2011年6月16日木曜日

ばけもの



渥美半島の田原市街から国道259を西に向かって走ると、やがて右手に三河湾が見え、左手に山が迫る。道はそのまま海岸と並行して伸びている。この国道からの眺望も魅力的なのだけど、国道の下にある旧道は、さらに印象的だった。

旧道沿いには、ある程度の樹齢の松の木が点々と残っていて、松葉のずっと向こうには蒲郡の街が見えていた。
大抵のクルマは頭の上の国道をびゅんびゅんと走るから、こちらは静かで、鳥の声が聞こえている。窓を開け静かにこの旧道を走ると、陽だまりの三河湾を独り占め出来たような気分になった。
前にカリフォルニア、モントレーの17マイルドライブを走った時のことを思い出した。

ゆったりとした時間の流れる旧道の後半に差し掛かると、化け物のような松の木が、大きく腕を広げ、まるでブンブンと回旋しているかのような通せんぼをしてきた。この木は群を抜いてでかい。クルマを停めておそるおそる近づくと、まるで自分も周りの草も彼の回旋の風に煽られているような気分になった。

この旧道の隅っこには、かつて戦争のために敷かれた鉄道の杭が残されている。鉄道が走っていた時もこの松は、ここにいただろう。彼は、力強い時代の生き証人だ。

去り際見つけた案内板には「市内最大級の松」と書いてあった。また、彼に会いに行きたい。