2012年12月11日火曜日

考えてる人

紅茶の葉が入っていた平べったい缶には、貝殻やどんぐりなどが入っている。
妻が娘と散歩した時に拾ってくるものだ。
貝はわりと小さくて形の整ったものが多い。たぶん娘の手の大きさで握りやすいものを選んで拾っているのだろう。

先日僕は、缶から貝を出して娘と遊んでいた。
片方の手に貝を握って、もう片方は何も握らない。
いちど貝を片手で握っているのを見せてから、両手をうしろにまわして反対の手に貝を握りなおす。そのうえでもう一度両手を前に出す。よくある手品のような遊び。

彼女は何度か僕の思ったとおりに逆の手を解いた。
解いた手に貝が無いのを不思議がった娘はまた反対の手を解いて貝を発見する。とたんに嬉しそうな顔をする。

味をしめた僕は同じ手口を続けることにした。さっきのようにやってみると、彼女は今までと違って静かになり、両手を眺めていた。

彼女は一呼吸おいてから、両手で僕の手を同時に解いた。貝を見つけるとすぐに取って得意そうな顔をした。

まったく、ばれてしまった。

その瞬間僕は少し恥ずかしくなった。
物事をちゃんと考えてるのは彼女の方なんだとドキッとしてしまった。