2010年11月3日水曜日




学生の頃埼玉に住んでいた僕は、たまに実家に帰ってきては夕方になると浜で夕やけを見ていた。

オレンジの西日が部屋に入り始めた頃にドアを開け、すぐ前の浜に着くとたいてい先客が一人だけいた。

当時彼は、沖に伸びる埋め立て地の一番海に突き出た角っこに佇んでいて、僕の目線より高い場所から夕焼けを見ていた。僕もそこから夕焼けを見たことがある、あそこは誰もいない最高の場所だった。

鳥の気持ちはわからないけど、彼は何十分もずっと夕焼けのほうに向いて動かない。餌を探していたりする様子もないし、何かを待っている感じでもない。だから、彼も同じ理由だな。ということで親しみを込めて彼の後姿と夕焼けを眺めるのがたのしみだった。

ちょっと前に埋立地に施設ができてからは彼の姿はいつもの場所になく、少し心配していた時期もあった。
だけど、彼は今も別のところで夕焼けを見ている。人気のいない岩場で。

前と比べたら、僕と近しい目線の高さになった。今日は久しぶりに浜に行く予定なので多分彼と会うかな。
彼のうちは僕のうちの裏山にある。