2011年3月27日日曜日

サイカチの木



高校の頃、試験前によく通った館山図書館。勉強という名目だったけど、思い返せば関係ない本ばかりに手が伸びていた。

駅から図書館に向かう途中に、路上に堂々と幹を張る一本の木がある。ずいぶんと迫力のある胴回りなので、通るこちらがついついよけてしまうのだけれど、それにしても何でこんなに道にはみ出ているの?と疑問を抱きながらいつも前を通っていた。

その疑問の答えは、ある日図書館の本棚から見つかった。
本棚からとって読んだ本に書かれていたのは、大津波が館山を襲った時、この木によじ登った人が津波の難を逃れたというものだった。

本を読んだ日の帰り道、僕はこの木に一礼して帰った。
今日もサイカチの木は、災害の記憶を道行く人に伝え続ける。